ある日、角交換が苦手で序盤からボロボロに負けて泣いて
「10級くらいかな」と診断されます。
実際、角交換で勝ったのをほとんどみません。
どうも角を打ち込まれる危険な箇所を予測するのができないみたいで、打ち込まれてから紐付けもないようなその場しのぎの回避。もちろん、すぐ突破されます。
序盤の駒組みで角交換を拒否するのが妥当な気もするのですが66歩を突くのも嫌なんだそうです。
そういえば、去年の『ムアツプラス杯女流アマ名人戦』で負けた対局も角を交換した直後…
二歩と一緒でそのうち勝手に改善すると仰る方もいますが、いつまでも治らずいつか大泣きに発展してしまう気がするので角交換を特訓することにしました。
といっても将棋初心者な父に出来ることはありません。
こういった練習は、「激指」に任せます。対局相手を角交換が得意戦法のキャラクターに設定して対局。角交換型の序盤だけでも形にして、開始早々総崩れにならないようにすれば、少しは将棋になるのでは、と。
（「棋士・藤井聡太の将棋トレーニング」には戦型指定がありません）
「激指」が、アドバイスしてくれるわけではないのでただひたすら回数をこなすだけです。きっと、専門家の方からみると非常に効率が悪いのでしょう。それでも、普段から一人で将棋をがんばっている姿を想うと…どうかこの努力が報われて欲しいと願います。
そんな矢先、
東京の大会に出てみませんか？
初心者クラスだけど強い子も集まるから勉強になるよ。トロフィーもあるよ。
とお誘いを受けます。
都会の子は強い子が多くて
対局しても辛いだけかもよ？
出てみる！トロフィー！！
いや、トロフィーはおいとくとして
確かにいろんな子と対局して吸収するのは…一日ならなんとか…と仕事と相談します。
子供将棋大会 当日
朝は、まだ気温一桁で寒い日もあるのですが流石に都会はそんなことなく暖かいですね。
北海道や東北地方から東京に移動する場合、服装の問題があったりします。
（オシャレ的な意味ではなく）
暑がらないかな？気温差で体調崩さないかな？と余計な心配をしています。
どちらでもいいように長袖も半袖も用意してきたので鞄はパンパンです。
父の休日は一日しかなく、ほぼ日帰り上京。
それでも、大会後にどこか連れていけるかなと聞いてみると…
東京に行くんだから、どこか遊びたいところない？
ディズニーとか。
ないよ？
遊びにいくんじゃないよ？ 勉強しにいくんだよ？
そ、そうだね＾＾；
ん〜 でも…
（女流棋士の）○○先生に会いに行きたい。
そこまで将棋だけじゃなくてもいいのですが、かわいい子の願いとあらばと連絡してみます。残念ながら、タイミングが合わず指導対局は叶いませんでした。父は無力です。
今回は、将棋大会参加とその後に東京将棋会館道場の予定となりました。
大会当日
新宿から電車で最寄り駅まで移動。東京の人の多さに酔ったのか、少しぐったりしています。休ませたいところでしたが、会場に辿り着けるか不安もあり先に向かいます。
将棋大会会場には、大勢の子どもたち。練習対局していたり将棋の本をみていたり熱気に包まれています。
受付をして、見たことがない用紙（手合い表？）を渡され二人でキョロキョロ。
どうやら、対局後に勝者が二人分の手合い表を手合い係？の方に持っていくみたいです。
その後、大会についてお話を聞きます。
対局方式は、時計なし（最初のみ）持将棋27点。
予選リーグを14局行い、上位3名ずつによる決勝トーナメント。
初めての場所で不安を隠しきれないまま大会が開始されます。
子供将棋大会 予選開始
予選1局目 先手
…………タン。パチン！
…………タン。パチン！！
いきなり初戦から都会の洗礼？を浴びます。
ゆったりとしたつまみ持ちから駒を置くと、間髪いれずノータイムで指してくる早指しについていけず涙目になっています。速く指さないとダメと勘違いし、気圧されつられて速く速く指そうと慌ててきました。
普段、考えるのが遅いのでいつも時計の時間を蒸発させている子が、急に早指しなんてできるわけありません。
盤面の方は…攻めのコンセプトもない、紐づけもないようなその場限りの駒置き（受け）で、そのまま負けてしまいました。
…あんなに早く指せない ＞＜
早く指さなくてもいいよ？
相手の子がどれだけ早くても慌てずゆっくり指して大丈夫だから。
…強いし早い ＞＜
強いかもしれないけど、早いから強いとは限らないよ？
いつもみたいに、最善手はどこかな？ ハズレはどこかなー？ってクイズを当てるつもりでゆっくり考えてごらん。
早見え早指しというのは、きっと才能の部分であってそこで竸っててもしょうがありません。
全部負けてもいいから＾＾
勉強にきたんだから、ゆっくり考えていっぱい覚えて帰ろう
……うん
少し泣き止んで次の席に座ります。
誤魔化すようになぐさめましたが、内心いきなり東京の子達と対局するのは無理させすぎたかと早くも後悔。どうか対局不慣れな子供には、ゆっくり指しても大丈夫だと落ち着かせてください。それだけで変わってくるものがあります。
予選3局目 後手
2局目も苦戦しましが、3局目はもっと苦戦します。ゆっくり丁寧に指しているけど、突破できず20分経過しました。相手の男の子が強くて（苦手な矢倉で）中々活路を見いだせません。
矢倉の傷を修復するのを好む少年で、幾度となく駒が補充されます。最後は、30分経過した頃に将棋少女の無理攻めっぽい攻めが通り辛勝。
強い…負けるかと思ったぁ…
とても勝った表情ではないのですが、とりあえず無事戻ってきます。
このペースで14局？ とても、最後まで集中力も体力ももたないような…
予選 前半（7局）終了
組み合わせ（手合い係？）の合間にinゼリーで補給
今回の大会は、事前に食事を済ませてる体で、休憩なしで行われています。
周りでは、他の親子が対局結果を振り返って専門的な話をしています。
…将棋初心者な私が手助けできるわけもないのですが、ここまで何局も左側を突破され序盤から負けそうになっているのが気になります。
どうしたの？ なんか難しい序盤があった？
うーん…
棒銀なんだけど、端歩しても出てくるし銀じゃなくて香車で来たときの練習したことない…
棒銀に躓いていました。将棋道場で練習して教えてもらっていればきっと簡単なことなのでしょうが、普段『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』で一人で練習している将棋少女は、基本的なことが抜けてたりします。
（棋士藤井聡太の将棋トレーニングには、特定戦法との練習設定項目なし）
とりあえず、同香には97歩で受けてみようか。歩合には歩で、香車なら桂馬なのかな？ 98歩で「と金」狙ってきた場合は…
あっ 呼ばれた！行っておいで！！
初心者親子は、その場しのぎの正解かもわからない話し合いで、後半戦に突入します。
予選 9局目 先手
将棋少女は気づいていたのでしょうか？ 初めて穴熊との対局です。
こちらは、飛車を成り込むことには成功しましたが、すでに相手の玉は奥深くまで巣篭もり。
ここからどうやって攻めるのかまったくわかりません。龍を一段目にセットしてアタックするも軽く弾き返されその隙に逆に攻め込まれます。そして、守りの駒がなくなり端まで逃げるも、自玉に詰みが発生。
「穴熊初めてだったから仕方ないね、帰ったら復習しようね」と慰めの言葉を考えていたら、
詰み逃しから逆転勝利していました。
手放しでは喜べないですが、自玉に詰みがあったこと、最後まで諦めないことが偉かったこと。
そして、帰ったら復習しようね。と頭を撫でました。
予選10局目 後手
後手スタートでしたが、端歩突かれた時に端歩は受けずに横歩をとって後手横歩取り？の局面に突入。そこから45に角を置かれて（45角戦法？）空中戦の開始でしたが、すぐに敗北となりました。
元々、読みが浅く角や飛車が飛び交う将棋は苦手です。
通常の角交換が入っただけでも、一気に詰まされる事もあり、角交換の練習してきましたが…
付け焼き刃ではどうにもならなかったようです。
45に角打たれて、その先わかんなかった ＞＜
本日二度目の泣き虫タイム。
なんで泣いてるの？
棒銀に穴熊に45角。もう今日はすごい勉強してるよ？
いっぱいがんばってエライよ。あと全部負けても気にしないでいいよ
美味しいもの食べて帰ろうね
廊下で落ち着かせて送り出します。
見慣れない角の使い方に敗北しましたが、ここから予選最後までがんばり決勝トーナメント進出を決めました。
子供将棋大会 決勝戦
予選結果により決勝トーナメント1回戦はシード。ここまで14局。
穴熊や角交換、まだ見たこともない戦法がきたらそこで終了ですが、なんとか見たことがある出だしで、序盤から総崩れすることなく決勝に進むことに。
決勝は、苦手な時計ありで持ち時間なしの秒読み30秒。
お相手は、予選3局目で30分以上の熱戦だった矢倉の男の子。
どうしよう…？
30秒しかないから攻めも受けも間違えて当然。
相手の子は強いけど、それでも30秒で正解（最善手）だけ指すのは厳しいよ。
攻めも受けも両方考えてたら30秒なんて足りなすぎるから、どんどん攻めてみる？
将棋少女は、攻めることを選択。これで負けても父親のせいになります。
どうか負けても傷つかないで帰ってきてほしいと祈るばかり。
矢倉にぶつかっていき、予選と同じくすぐ矢倉を補充されてなかなか突破できませんでしたが、それでも攻め続けました。
子供将棋大会を終えて
今回参加した子供将棋大会は、予選14局と決勝トーナメント2局の計16局という過去最大のハードな大会でした。
対局時間11:30からスタートで、17:00に終了と5時間指し続け、将棋少女の顔に動きがなく限界…疲れすぎたのか帰りはすぐ寝てしまいました。
普段からこれぐらい指してるからか上級生の男の子たちは、まだ元気な様子。
体力的な問題はしばらく続きそうです。
大会結果は、全予選14局中12勝2敗のBブロック1位通過（全体では２位）は、初戦の圧倒的敗北からは考えられなかったリカバリー。
ですが、予選途中、初めて大会で穴熊と遭遇し果敢に攻めるも、硬さに跳ね返され右往左往。自玉に詰みが発生していて実質負けでした。穴熊崩しを勉強しなければなりません。
他にも、やはり課題としていた角にやられました。（45に角を置かれてなす術もなく敗北）
決勝トーナメントは優勝できましたが、この辺りは組み合わせ順・運が良かったとしか言えません。穴熊使いや45角戦法とトーナメントで対局していたら勝ち残れなかったはずです。
大変勉強になった一日でした。
初段免状、貰えるよう頑張ろうね
うん！
初段にはまだまだ遠いですが二人でひっそりと話しました。
今回、大会への参加を勧めていただきありがとうございました。
夜行バスだと10時間はかかる距離で、その上とんぼ返りだと楽しくないのでは？
辛いだけかもしれないと心配していましたが…
帰ったら復習しよ？穴熊！！
初めて遭遇した穴熊に危機感を感じ成長できたようです。
普段『棋士・藤井聡太の将棋トレーニング』のAIとばかり対局していると見ることのない、子供たちの自由な指し手や戦法に対して「どうすればよかったのか」と、探求心にも繋がり少しだけ初段に近づけたのかもしれません。
また、知らない土地で大勢の中にすんなり入っていくのは、普段対面で対局していない子供にはハードルが高く、棋力以前にメンタル的に戦える状態ではない可能性があります。
あらためて、小さいうちは心を落ち着かせて普段通りに盤面に集中できるよう精神的なサポートの必要性を感じました。
新宿に着いた頃には19時で、残念ながら東京将棋会館道場も鳩森八幡神社にもいけませんでしたが、次の機会にとっておきます。
子供将棋大会運営の皆様、泣きながら目を腫らしながら指す将棋少女に優しく接していただき、小学生のみんなも一緒に指していただきありがとうございました。
これから先、まだまだ知らない指し方・戦法にたくさん出会って、その度に負けて泣いていると思います。
精神的にも成長できる日まで、何卒見守っていただければと存じます。